研究課題/領域番号 |
21659189
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
寺井 崇二 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00332809)
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研究分担者 |
山本 直樹 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90448283)
高見 太郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60511251)
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キーワード | medaka / Maid / 肝細胞癌 / Maid KO mice |
研究概要 |
これまでに当科でMaidのヒトホモローグHuman Homologue of Maid(HHM)のクローニング、HHMの肝臓特異的な遺伝子発現制御、ヒト肝前癌性病変のマーカーになりうることについて報告している。一方で最近Maid KOマウスでは肝臓特異的に発癌が見られることから、癌抑制遺伝子として注目されている。我々まず最初に分化増殖および発癌の効率の良い評価系であるゼブラフィッシュを用いて、Maidを単離し、その機能解析を行った。DEN (diethylnitrosamine)を含む水で3週間飼育した後、薬剤を含まない水で5週間生育させた短期モデルとDENを含む水で8週間飼育した後、薬剤を含まない水で12週間飼育した長期モデルより肝臓を採取した。トランスジェニック(Tg)メダカはアクチンプロモーターの下流にHHMcDNAをつないだコンストラクトをマイクロインジェクションすることで作製した。DEN曝露により肝腫瘍を誘導したところ、短期モデルでは4.3%の個体に腫瘍を認め、長期モデルでは50%の個体に見られた。Maidの発現を免疫組織染色で検討したところ、短期モデルのFociのうち50%に背景肝と比べMaidの発現亢進が認められた。短期モデルで得られたHCC病変すべてにおいてMaidの発現が背景肝と比べ変化を認めなかった。長期モデルで得られたHCCのうち80%でMaidの発現が低下していた。また長期モデルでのみcholangiocarcinoma、mixedtumorが得られ、これらの腫瘍すべてにおいてMaidの発現の低下が見られた。次にMaidを恒常的に発現するTgメダカを作製したところ、複数のラインが得られた。そのうちMaidの発現が高いline52、line31について解析を行った。Tgメダカは正常に発生したが、生後3ヶ月目の体長が、野生型24.9±3.1mmに対しline52では22.3±2.6mmと有意に体長に差が認められた。さらに生後1年のTgメダカでは体躯の曲がった個体(老化したと考えられる)を多く認めたが野生型では認めなかった。Maidは肝が再生する際に発現が誘導されることより、肝細胞の増殖に関与すると思われる。培養細胞で発現が少なく、肝腫瘍でも発現が低下していることからMaidの発現の低下が細胞増殖性亢進に関与することが考えられた。また作成したMaid KOマウスを用いて肝線維化誘導、脂肪化を誘導し、野生型との比較を行っており、Maid KOマウスにおいては肝線維化誘導時の肝細胞の増殖性が違うことが明らかになった。来年度は平成21年度の明らかになり作成した各種モデルを使い、非アルコール性脂肪肝炎状態におけるメダカ、マウス、ゼブラフィッシュの肝発癌、肝再生の評価、またMaidシグナルの関与について解析していく。
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