肝細胞増殖因子(HGF)は胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)からの肝細胞分化誘導には必須の因子であり、HGFはラットの肝幹細胞と考えられているOval cellの増殖と肝細胞への分化も促進する。本研究では、ES細胞や肝幹細胞で行われてきた肝細胞分化誘導法を参考にして、HGFを用いたiPS細胞の肝細胞への分化誘導法を明らかにし、細胞移植治療の応用につなげることが目的である。本年度は、マウスiPS細胞から肝細胞への誘導過程の細胞集団から肝幹細胞の同定を試みた。その結果、iPS細胞から肝内胚葉細胞への誘導過程で経時的にD1k1の発現が上昇し、同時にEpCAMの発現が減少することを見出した。マウス胎生14日における肝芽細胞はD1k1陽性EpCAM陰性の細胞であると考えられており、これらの結果からiPS細胞から誘導した肝内胚葉細胞の中には肝芽細胞が存在すると考えられた。肝細胞移植のソースとしては分化した肝細胞よりも肝前駆細胞(肝幹細胞または肝芽細胞)の方が適している可能性があり、肝細胞誘導過程の細胞集団に効率よく肝幹細胞を分化誘導し、高純度の肝幹細胞を分取できれば、細胞移植療法への貢献度も大きいと考えられる。
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