研究概要 |
メタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患のリスクとして注目を集めているが、一般的には肥満→メタボリックシンドローム→糖尿病→冠動脈疾患という疾患の進行が想定されていることが多い。ところが、我々はin vivoイメージング法を開発し、脂肪組織の肥満が動脈硬化と類似した慢性炎症性疾患であることを初めて明らかにした。また、転写因子KLF5が心血管疾患とともに、メタボリックシンドロームの発症にも重要であることを報告してきた。これらの結果は、代謝異常が血管疾患を引き起こすという順序ではなく、肥満では代謝系と心血管系の両者で同時に病態が進行し、また、共通した刺激が、共通した分子機序で病態を引き起こしていることを強く示唆する。「脂肪毒性」はこのような共通した病態基盤の可能性が高い。血管における脂肪毒性について、病態における意義と、細胞・組織障害をもたらす分子機構の両面から検討することによって、「血管脂肪毒性」を確立することを目標とするとともに、心血管系-代謝系の両者における脂肪毒性のシグナリング機構を解明する。そのために、1.血管脂肪毒性の発生と血管病態における意義の解析、2.血管脂肪毒性の情報伝達経路の解析について検討を並行して行った。その結果、血管平滑筋細胞が遊離脂肪酸によって形質変換を生じることを見いだした。その制御機構として、NADPH oxidaseによる活性酸素種の産生が重要であることを見いだした。遊離脂肪酸はTLR4を活性化し,NF-κB→NOX1経路を介して活性酸素種を増加させ、炎症関連遺伝子の発現を誘導し、血管病変に寄与する。
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