研究概要 |
心筋疾患の病因となる細胞内タンパク輸送障害に関わる分子間の機能連関異常を解明するとともに、その異常を是正する低分子化合物をスクリーニングし治療薬のシーズを得ることを目的として研究を実施し、以下の成果を得た。(1)心筋イオンチャネルの細胞質内ドメイン機能の解析:KvLQT1チャネルの細胞内ドメインにチャネル分子の細胞内輸送障害を来たすQT延長症候群関連変異を2種見出した。1種はチャネル分子の結合異常、他種は小胞体内貯留を来たした。一方、Brugada症候群患者の一部に見出されるLIMドメインを有するタンパク遺伝子の変異は心筋Naチャネル(SCN5A)に対する結合性を増強した。(2)心筋症における転写関連因子(CARP)の核内局在障害メカニズム:転写関連因子であるCARPタンパクは未分化な段階では核内に集積し、分化が進むと核から細胞質に移行する。我々は肥大型心筋症患者に3種のCARP変異を見出したが、ラット心筋細胞変異CARP遺伝子を導入すると、正常、変異CARPとも未分化段階では核内のみに局在したが、分化段階では正常CARPは細胞質のみに局在し核内には存在しないが、変異CARPはいずれも核内に残留した。一方、拡張型心筋症患者に異なる3種の変異を見出したが、これらはいずれも細胞内局在異常を示さなかったが、C2C12細胞株に導入するとストレッチ反応関連遺伝子群の発現パターンを変化させた。(3)変異イオンチャネル細胞内輸送障害を是正する低分子化合物の探索:正常あるいはQT延長症候群の原因となる2種のKvLQT1変異を導入したCOS7細胞株をそれぞれ樹立している。これらの細胞株を用いて、変異KvLQT1チャネルの細胞表面発現を増強する低分子化合物をスクリーニングしている。現在までに11,000種の低分子化合物のスクリーニングから候補化合物を選択した。
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