研究概要 |
肺・気管支は内胚葉由来の呼吸器系臓器であり、体内外のガス交換を司るという特性上、気管から肺胞に至る気道、肺胞、そしてそれを取り巻く肺動静脈系と、解剖学的に複雑な組織形態をとっている。そのため、再生医学の対象になりづらい臓器の一つに挙げられているが、肺気腫を始めとする炎症性肺疾患の多くは、細気管支より末梢の気道域に不可逆的な組織破壊を伴っており、このような疾病に対する細気管支・肺胞の組織再構築は、目指すべき根源的な治療法と考えられている。そこで当該研究課題では、治療を受ける疾病者本人の体細胞から作製可能という誘導多能性幹細胞(ips細胞)の利点を生かして、ips細胞を細気管支・肺胞の組織再構築に活用していこうという将来目標を掲げ、その基盤的技術の開発を行うものである。本年度は,iPS細胞から気管支肺胞上皮幹細胞(CCSPとSPCが共に陽性)へのin vitro分化系を樹立するために,フローサイトメーターによって,気管支肺胞上皮幹細胞を同定する実験系を確立した。具体的には,Teisanuらの方法(Stem Cells.2009;27:612-22)に従って,気管支肺胞上皮幹細胞を同定した。この細胞集団はマウス肺の全細胞数の5%程度であった。また,マウスにナフタレンを投与すると,CCSP陽性のクララ細胞が除去されることが知られているが,この細胞集団はナフタレン投与によっても除去されず,薬物排出能に富むという幹細胞の特徴を具えていることを確認した。
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