研究概要 |
肺・気管支は内胚葉由来の呼吸器系臓器であり、体内外のガス交換を司るという特性上、気管から肺胞に至る気道、肺胞、そしてそれを取り巻く肺動静脈系と、解剖学的に複雑な組織形態をとっている。そのため、再生医学の対象になりづらい臓器の一つに挙げられているが、肺気腫を始めとする炎症性肺疾患の多くは、細気管支より末梢の気道域に不可逆的な組織破壊を伴っており、このような疾病に対する細気管支・肺胞の組織再構築は、目指すべき根源的な治療法と考えられている。そこで当該研究課題では、治療を受ける疾病者本人の体細胞から作製可能という誘導多能性幹細胞(iPS細胞)の利点を生かして、iPS細胞を細気管支・肺胞の組織再構築に活用していこうという将来目標を掲げ、その基盤的技術の開発を行うものである。そこで当該年度は,iPS細胞から気管支肺胞上皮幹細胞へのin vitro分化系を樹立するために,フローサイトメーターによって気管支肺胞上皮幹細胞を分離し,その性状や機能を解析した。その結果,100,000個の気管支肺胞上皮幹細胞を経静脈的にマウスに投与することによって,ナフタレンの肺炎症が有意に軽減されることを明らかにした。さらに,マイクロアレイ解析を行って,気管支肺胞上皮幹細胞(CCSPとSPCが共に陽性)とクララ細胞(CCSPのみ陽性)とのmRNA発現を比較したところ,クララ細胞に比べ,10倍以上有意に発現が上昇していた遺伝子が229個(うち100倍以上が2個),10分の1以下まで有意に発現が低下していた遺伝子が366個(うち100分の1以下が9個)同定することができた。
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