研究概要 |
水素投与に伴う生体内水素動態を探るためラットを用いた動物実験を継続して行った.ネンブタール麻酔,人工呼吸下のSDラットの腹腔内にゾンデをタバコ縫合にてゾンデを留置し,室内気を注入し,一定時間後の水素濃度を計測したところ,腹腔内水素が増加することから腸内醗酵に伴う水素が腹腔内に容易に拡散することが明らかとなった.これにより水素分子が血流のみならず腸管から直接隣接臓器に拡散することが分かった.拡散移動の程度が血流と比較しどの程度であるかは不明であるが,水素分子に抗酸化ストレス能があることから,腸管のみならず隣接する臓器(肝,腎,膵,脾,膀胱,子宮,卵巣,腹部血管など)における疾患発症との関連性について興味深い示唆を与えた.昨年度に引き続き,水素水摂取に伴う呼気中水素分子の排気量から生体内活性酸素種を推定する方法として,水素ガス吸入法に伴う呼気水素濃度,換気量から水素分子摂取量を評価したところ,水素水飲水法と比較し,ほぼ同程度のオーダーであることが分かった.しかし,水素水飲水法の約二分の一程度であることから,水素分子による活性酸素の消去が主に肝臓であることが推定できたが,臓器別の活性酸素生成量をより直接的な方法で計測する必要性ができた.このため種々の活性酸素計測法を検討したところ,レーザー誘起発光法が高感度で活性酸素種を非侵襲的に計測可能であることが判明した.皮膚表面に雰囲気中より1桁オーダー高い濃度のヒドロキシルラジカルが検出でき,さらに抗酸化剤投与により信号が抑制できたことから,生体由来のものであることが確認できた.
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