Aβオリゴマー分解活性をもつ腹水精製抗Aβオリゴマー特異的抗体による受動免疫療法を老人斑・神経原線維変化を再現する3x-Tgに投与し、Aβオリゴマー特異的分解制御がAβオリゴマーを起点とした記憶障害(AD発症)から神経変性(tauopathy)に至るアミロイドカスケードに及ぼす影響をin vivoで直接的に検証した。神経原線維変化が100%認められる26ヶ月例まで週一回5週間継続投与で、アルツハイマー病モデルマウスの記憶障害が著明に改善することを新奇物体探索試験にて確認したが、この結果はこれまで他のアルツハイマー病モデルマウス(Tg2576)で認められた抗体投与群における結果と同等であった。本年度の研究ではこのTg2576マウスで観察困難であったAβオリゴマーと神経原線維変化との直接的因果関係を、治療群と未治療群において脳病理組織学的に直接検証した。神経原線維変化の検証はGallyas-Braak銀染色を用いて行い、リン酸化タウ抗体陽性でGallyas-Braak染色陰性をpre-tangle、リン酸化タウ抗体陽性でGallyas-Braak染色陽性のNFTと分類し検証した。Aβオリゴマー特異的分解活性を併せ持つ抗体でAβオリゴマー制御をした結果、抗体投与群脳内でpre-tangleとNFTの両者の形成が著明に抑制されることが明らかとなった。本結果はAβオリゴマーを標的とし、その分解活性を持つ抗体投与がアルツハイマー病治療に有用である可能性を示唆している。
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