1.Pref-1陽性細胞の脂肪細胞新生における意義に関する検討 Flow cytometryを用いて、各脂肪組織部位におけるPref-1陽性細胞の検討を行った。Pref-1陽性細胞は、CD31陽性細胞(血管内皮細胞)やF4/80陽性細胞(マクロファージ)とは明らかに区別され、内臓脂肪組織と比較して皮下脂肪組織で豊富に存在した(間質細胞中に約2%)。食餌性肥満マウスでは、内臓脂肪組織のPref-1陽性細胞比率に明らかな変化を認めなかったが、皮下脂肪組織では著明な低下を認めた。以上より、脂肪組織部位による脂肪細胞新生の違いにPref-1が関与する可能性が示唆された。 2.病態生理的脂肪細胞新生におけるMAPK phosphatase-1(MKP-1)の意義に関する検討 昨年度に引き続き、脂肪細胞特異的MKP-1トランスジェニックマウス(MKP-1Tg)の解析を行った。このマウスの脂肪組織では野生型マウス(WT)と比較してMKP-1タンパク質発現が増加しており、MAPキナーゼの活性低下が認められた。脂肪細胞分化の過程においてMAPキナーゼの活性化が重要であり、ERKやJNKを欠損するマウスは肥満に対して抵抗性を示すことが知られている。MKP-1 Tgに高脂肪食を負荷して肥満を誘導すると、体重や脂肪組織重量は野生型マウスと有意な差を認めなかったが、肥大化脂肪細胞と小型脂肪細胞の両方がMKP-1 Tgマウスで増加しており、病的脂肪細胞新生におけるMKP-1の意義が示唆された。MKP-1 Tgは、高脂肪食負荷に伴う肝異所性脂肪の蓄積が野生型マウスと比較して有意に軽減していた。3T3-L1脂肪細胞にMKP-1を過剰発現することにより、TNFα誘導性脂肪分解が有意に抑制された。以上より、脂肪細胞においてMKP-1は、脂肪細胞分化と脂肪蓄積能を制御することが示唆された。
|