GLP1はインスリン分泌刺激作用・β細胞増殖促進作用を有し、この点に着目して開発されたGLP1アナログおよび、GLP1の分解を阻害して血中濃度を上昇させるDPPIV(dipeptydyl peptidase4)阻害薬が糖尿病の治療薬として注目を集めている。GLP1の主要分泌源である腸管内分泌細胞、L細胞は腸管上皮内に散在し、その単離が困難なため、GLP1の分泌制御機構の詳細な解析は不可能であった。平成21年度までにGLP1の前駆体をコードするグルカゴン遺伝子に蛍光緑色蛋白を相同組み換えによりノックインしたマウス(GCG-gfp/+)を作成し、このマウスの腸管に蛍光を示す細胞が散在していることを確認、さらに蛍光免疫組織化学法により、この細胞内にGLP1・GLP2を含む分泌顆粒が存在すること、すなわちL細胞が蛍光によりラベルされていることを証明した。平成22年度は腸管上皮細胞よりGFP陽性細胞をfluorescent assisted cell sortingにより単離することに成功した。単離した細胞の遺伝子発現プロファイルを、マイクロアレイを用いて解析を行った結果、確かにグルカゴン遺伝子を発現する細胞が選択的に回収できていることが確認できたほか、L細胞において特異的に発現する遺伝子の候補を同定することができた。これら遺伝子の発現を定量PCR法により解析すること、などにより、L細胞の増殖・分化機構を詳細に検討するのみならず、L細胞の増殖促進・GLP1分泌促進を作用機序とする新しい糖尿病治療戦略創出への足場が築かれた。
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