本研究では、未だに特異的治療法が確立していないEBウイルス感染症および関連腫瘍に対する、新規治療薬の開発ならびに作用機序の解析を行った。ヒト骨肉腫由来細胞である143BにEBウイルスのthymidine kinase (TK)を発現させたスクリーニング系を用いて同定された核酸誘導体は、EBウイルス潜伏感染状態にあるB細胞や、EBウイルス非感染T細胞には全く増殖阻害活性を示さなかった。一方、慢性活動性EBウイルス感染症患者由来のリンパ球系細胞であるKAI3に対しては、4.3μMのIC50を示した。一方、対照として用いたガンシクロビルは、EBV非感染T細胞にも増殖抑制効果を示した。我々が同定した核酸誘導体は、EBウイルスのTKが発現している細胞においてのみその増殖阻害活性が見られたことから、本化合物の、TKを介した優れたEBウイルス選択的作用が明らかとなった。また、健常人のPBMCを用いたEBウイルス感染実験からは、化合物非存在下でEBウイルスを感染させた細胞におけるウイルス量を100%とした場合、化合物存在下ではウイルス量は10%以下にまで低下していた。さらに、作用機序の解析においては、TKに対するshRNAを組込んだレンチウイルスを感染させたKAI3細胞では、TKの発現低下に伴って薬剤感受性の減少が認められた。以上の結果から、本核酸誘導体は、実際にTKを標的分子としていることが明らかとなった。これらの結果は、EBウイルス関連腫瘍に対する特異的治療薬の開発が可能であることを示しており、我々が同定した核酸誘導体がその候補薬として適していると考えられた。
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