近年、関節リウマチなどの自己免疫疾患に対して優れた治療効果を発揮する抗体医薬品が開発され、臨床応用されている。一方で、自己免疫疾患患者においては抗体医薬品に治療抵抗性を示すケースも見られることが報告されており(Ehrenstein.M et al.(2007)JEM)、どの患者にどの抗体医薬品が奏功性を示すかは抗体医薬品を投与しない限り分からないというのが現状である。 申請者は抗体医薬品の効果を予測するバイオマーカーを同定するために、定量プロテオミクス手法の1つであるiTRAQ(isobaric tag for relative and absolute quantitation)法を用いて関節リウマチ患者においてinfliximab(抗TNF-α抗体)治療前、治療後の血清を解析した結果、leucine rich alpha-2 glycoprotein(LRG)の血中濃度が治療前にて高発現を示すことを明らかにした。ELISA法にて解析した結果、血中LRGは関節リウマチ、クローン病の活動性スコアと相関し、CRPよりも強く相関したことから、疾患活動性マーカーとして有用であることが明らかになった。さらに、血中LRGはCRP値が正常値でありながら疾患活動性が高いクローン病患者おいても高値を示したため、CRPでは検出できない疾患活動性の高い患者の検出に適していることが明らかになった。さらに血中LRGはinfliximab感受性のクローン病患者と比較して、infliximab抵抗性のクローン病患者にて高値を示したことから、infliximabの治療奏功性マーカーとなりうる可能性が示唆された。
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