【研究の目的】 これまでゲノムやエピゲノムの配列やパターンは、生涯変化しないと考えられてきた.しかしこれらが一卵性双生児間で異なることが報告され、この常識が覆されつつある.本研究の目的は、精神発達に著しい差異を認めるレット症候群の一卵性双生児例を対象に、ゲノム・エピゲノムの網羅的な比較解析を行い、発達障害差異要因となった遺伝子の同定を行い、未だ確立していない後天的なゲノム変化の概念を確実なものにすることである。研究期間の2年間のうち、1年目はゲノムやエピゲノム解析で候補遺伝子を見いだし、2年目は病態との関連性を検証する。 【本年度の研究実績】 ヒトゲノム上のCNV(反復配列)領域を網羅したマイクロアレイで解析した結果、レット症候群の症状の軽重を呈した一卵性双生児間で、101カ所のCNVの双子間の違いが認められ、このうち5カ所はレット症候群の標的遺伝子(CLIC3、DYSF、GRIN1、GRIN1、GRINA、ID4)の領域内であった。またヒトゲノム上の遺伝子プロモーター領域を網羅したマイクロアレイで解析した結果、194カ所で重症な双子が軽症な双子より高メチル化されており、逆に109カ所で軽症な双子が重症な双子より高メチル化されていた。 来年度は、CNV差異を認めた遺伝子については双子間での発現差異、アレイ法でメチル化差異を認めた遺伝子についてはメチル化差異のランキング上位の遺伝子にさらに絞り込み、bisulfite sequencing法などでメチル化差異の再確認を行い、確認のとれた遺伝子の神経系での発現や機能について調べ、双子間の発達障害症状の軽重を決めたメカニズムを明らかにする。
|