研究概要 |
乳幼児期の睡眠不足や睡眠の質の低下は、後年の多動・衝動性のリスクとなることが報告されている。小児の睡眠の判定のために、我々は多面的な新しいアプローチを試み、2年次は、以下のような成果を得た。 1)睡眠時ビデオグラフィの発達障害児における検討:広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害の子どもに対して、PSGと同時に赤外線ビデオカメラを用いて終夜ビデオグラフィを行い、両データを比較検討することにより、(1)睡眠時体動量がstage 1>stage 2、REM>Stage 3,Stage 4であること、(2)睡眠関連疾患の治療により体動が減少することより、体動量が睡眠のステージと質に関連していることが示唆された。 2)睡眠質問表の予備検討:就学前児の睡眠習慣、睡眠関連疾患に関連した質問票を作成した。当初8つのドメイン、計73項目を設定し、1次調査を行い不適切な質問を修正後に、2-5歳の、睡眠関連疾患群32名と、正常対照群86名において2次調査を行った結果、9ドメイン、39項目からなる質問票を作成した経緯が雑誌に掲載された。また、この「子どもの眠りの質問票」を用いて、2-5歳の3,014人の乳児に睡眠調査を行い、年齢別、性別、睡眠習慣別に統計学的処理を行っている。 3)発達障害児の睡眠脳波の解析:発達障害児において睡眠の問題が存在する子どもについてPSGを行い、その脳波を通常のR&Kに加えて、CAP(Cyclic Alternating Pattern)解析を行った結果、発達障害児ではCAPの出現が有意に高いことを見いだした。幼少の広汎性発達障害児の睡眠脳波データは稀少であり、幼少児のCAPのデータは世界発であり、現在投稿中である。 当該研究の遂行により、睡眠の異常が発達に及ぼす影響に関する研究が進展すると同時に、発達障害児の脳神経基盤についての知識を得ることができると期待される。
|