遺伝性ライソゾーム病の脳病態に対する根本的な治療法は現在まで存在しない。ケミカルシャペロン療法とは、基質競合阻害活性を持つ低分子化合物(ケミカルシャペロン)を細胞内で変異酵素蛋白質に結合させることで、構造的に安定化し、小胞体分解を逃れライソゾームへの輸送を促進することで変異酵素活性を上昇させ治療効果を上げる新しい治療法として注目されている。これまで私たちのグループを含め、複数の活性化合物の同定に成功しているが、本研究課題では新規化合物検索のための効率的なスクリーニング法の開発研究を行った。本年度はライソゾーム加水分解酵素β-ガラクトシダーゼのC末に分泌型ルシフェラーゼを融合した発現ベクターを作製し、一過性発現実験を行った。COS7細胞に一過性に遺伝子導入後、NH4Clを含む培養液で24時間培養し、培養液中に分泌されたβ-ガラクトシダーゼ酵素蛋白質をルシフェラーゼアッセイにより検出することができた。また、既存のシャペロン分子による変異酵素の残存活性に対する上昇効果についても同様にルシフェラーゼアッセイにより検出できた。今後は、ニーマン・ピック病C型や他のライソゾーム酵素に対して同様の発現ベクターを構築し、応用してゆく。また、この方法では、生細胞でシャペロン活性を測定することが可能となり、効率的な化合物ライブラリーのスクリーニングが可能となる。来年度は、実際にFDA認可化合物ライブラリーなどのスクリーニングを行い、そこでヒットした化合物については、インシリコ解析を行い、可能物の最適化を行う予定である。
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