研究概要 |
以下、当初設定した目標に沿って平成21年度の成果を記す。 1、FABP7と統合失調症との遺伝解析結果は報告したので、残りのFABP7と躁うっ病、FABP5,3と機能性精神障害との遺伝解析: FABP7と躁うつ病の関連に関しては、1つのSNPとハプロタイプで有意なシグナルを検出した。FABP5関しては、適当な遺伝マーカーが存在しなかったため遺伝解析が不可能であった。FABP3関しては、躁うつ病、統合失調症どちらにも関連が認められなかった(Iwayama et al. Am J Med Genet Part B, in press)。 2、FABP5,3の機能性精神障害死後脳における遺伝子発現解析: 興味深いことに、この両遺伝子は2つの疾患で特に男性で発現上昇が認められた。このことは、不飽和脂肪酸代謝異常が両疾患の共通病理の一部を構成している可能性がある。 3、Fabp7ノックアウトマウスが統合失調症関連表現型を示すことは報告したので、同マウスの情動関連表現型の解析:オープンフィールドテストで、中央に滞在する時間が特にオスで短縮していた。このことは、特にオスで不安が強い可能性がある。 4、ヒト末梢血におけるFABP7,5,3の遺伝子発現レベルの解析(正常群、未服薬の統合失調症群および気分障害群):FABP7,3は末血での遺伝子発現レベルが非常に低く、測定できなかった。FABP5は、男性のみで未服薬の統合失調症群および大うつ病群で発現低下が認められた。 5、胎児期マウスに種々の不飽和脂肪酸含量食餌を与えたとき、成体脳でのFabp7,5,3の発現解析および行動解析:現在、精力的に実験中である。
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