腫瘍における低酸素領域とそれにともない発現する血管新生因子(チミジンホスホリラーゼ:TP)のダブルターゲットとするアイソトープ治療のためのI-131標識薬剤を合成し、その有効性と限界明らかにすることを目的とし、平成21年度は以下検討を行った。 1.標品化合物5-ヨード-6-ニトロイミダゾールメチルウラシル(5I-6NIMU)の合成 6-クロロメチルウラシルと2-ニトロイミダゾールK塩のカップリング反応により6-ニトロイミダゾールメチルウラシルを収率68%で得た。6-ニトロイミダゾールメチルウラシルをNISによりヨウ素化を行い、93%で目的とする5I-6NIMUを得た。 2.標識化合物5-ヨード-6-アミノイミダゾールメチルウラシル(I-AIMU) 5I-6NIMUをメタノール-アンモニア水中水素雰囲気下10%パラジウム炭素により還元し、I-AIMUを、92%と高収率で得た。さらにI-AIMUは、塩酸で処理することによりI-AIMU・HClとして得た。 3.阻害活性の評価 得られた5I-6NIMUとI-AIMUのTP阻害活性(IC_<50>)を評価した。その評価は、TPがチミジンをチミンへと変換する反応を利用し、生成したチミンを定量することにより行った。その結果、5I-6NIMUは40.3μM、I-AIMUは0.05μMであった。 5I-6NIMUとI-AIMUを合成し、その合成法は放射性ヨウ素を用いた標識合成への応用が示唆された。 阻害活性の測定からはI-AIMUがより強い親和性を有したことから5I-6NIMUは、ニトロイミダゾールに起因する腫瘍低酸素部位への集積、引き続き低酸素環境下I-AIMUへ還元されTPの特異的な集積を有する可能性が示唆された。
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