研究概要 |
平成21年度は,主にインビトロで測定可能条件の決定の後,細胞や組織中の重金属の定性的,定量的解析を行った.画像化の試みだけでなく,測定したデータに定量性があるかどうかを,標準資料作成により検討した.最終的には信号の画像的なパターン解析を行い,金属の組成(何がどの割合で混合しているどのような形状のものか)を同定することを目的とした.大気マイクロPIXEによるPtの定量性を確認するために,標準試料(Pt濃度を変化させた寒天を20μmに薄切し凍結乾燥したもの)を作成し,測定を行った.結果として,Pt濃度を指標とした標準曲線を描く弧が可能であり,大気マイクロピクシーの定量性が確認された.細胞実験はヒト肺腺癌細胞であるA549を用いて,10μMのBrdUでパルスラベルした対数増殖期の細胞を5μm厚のマイラーフィルム上で培養し,生着したことを確認した後,1mMのシスプラチンを接触させた.接触時間は30分から24時間とした.薬剤に接触後,THAMバッファーで6回洗浄した後,急速凍結乾燥した.培養細胞試料では,P,K,C1などの細胞の局在を示す元素,BrdUでラベルした核内Brおよび細胞に取り込まれたPtが検出可能であったヒト肺のホルマリン固定後の資料では,異型性肺炎を発症した肺組織で,鉄,ニッケル,チタン,アルミニウム,珪素,クロムなどの金属が粒状または集族性に検出可能であり,本手法により画像化が可能となれば,元素そのものを描出する新しい診断法が確立できる可能性が示唆された.
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