研究概要 |
本研究は、ポストFDG腫瘍診断薬開発における根拠と系統的な設計戦略の構築を目的として、薬剤評価に用いるヒト培養細胞の遺伝子発現レベルをデータベース化し、癌細胞に高発現している機能性分子を予め探索するとともに、尿中排泄に関連する腎尿細管における分泌・再吸収機構を併せて分析し、速やかな尿中排泄性を有する分子標的腫瘍診断薬開発に利用する。特にポストFDG製剤の中でも有力候補であるアミノ酸製剤を取り上げ、腫瘍で特異的に高発現が認められるアミノ酸トランスポータに親和性を示す標識アミノ酸を選択し、集積機序を解析するとともに、腫瘍集積性との相関から、その設計戦略の妥当性を評価する。 まず、ヒト腫瘍細胞におけるトランスポータなどの機能性分子の発現を網羅的に観察するため、リファレンスRNAにより標準化したデータベースを構築し、その信頼性を確認した。アジレント社製DNAチップを用いて16種類のヒト培養腫瘍細胞における4万配列以上の遺伝子発現レベルを測定した。加えて、これまでの遺伝子発現解析結果の信頼性を確認するために、新たなヒト培養細胞試料の解析にあたり、委託業者にも同一試料の解析を依頼し、両解析結果の近似曲線の相関係数を求めて比較した。リファレンスRNAを用いて標準化するこの解析方法をこれまでのヒト腫瘍細胞における遺伝子発現解析結果に適用することにより、直接比較可能な特定機能分子の遺伝子発現プロファイリングがすべての試料に対して可能となった。また、このデータベースを用いてアミノ酸トランスポータの発現レベルを比較検討した結果、高発現を確認したアミノ酸トランスポータシステムLに特異的親和性を示すヨウ素標識アミノ酸を見出した(Nucl Med Biol,37:903-910,2010)。さらに、ポストFDG製剤として期待されているFACBCの前立腺癌細胞への集積に関与するアミノ酸トランスポータを明らかにし、分子標的とするアミノ酸トランスポータの発現との相関を検討した(J Nucl Med,in press,2011)。
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