本研究の目的は、放射性を持たない安定同位元素であるC-13化合物をトレーサーとして用いた^<13>C-MRスペクトロスコピー法により、生体の基本であるブドウ糖の脳内代謝マップを完全に非侵襲に感度よく観測することにある。そこでわれわれが行ってきた高感度の^1H-検出^<13>C-MRスペクトロスコピー法に、最近臨床MR装置で用いられるようになったマルチチャンネルのフェーズドアレイコイルとパラレルイメージング技術を組み合わせることによって、更なる高感度検出法の開発に取り組んだ。ハードウェアとしては、現有のラット頭部の^1H-MR画像用の4チャンネルフェーズドアレイコイルに送信用の大型の^<13>C表面コイルを組み合わせ^1H-検出^<13>C-MRスペクトロスコピックイメージングを可能とした。ソフト面では代謝された^<13>C化合物の代謝マップを効率よく測定できるよう、パルスプログラムの改良と撮像パラメーターの最適化を行った。さらに4チャンネルそれぞれで得られるデータを外部コンピュータに取り出し、パラレルイメージングの手法を応用した信号処理を行い、それらを統合表示するプログラムを開発した。容積コイルを用いる従来の方法に比べ、多チャンネルのアレイコイルを利用することにより顕著な感度の向上が達成された。ファントムを用いた実験結果は、平成22年秋、つくばで開催された日本磁気共鳴医学会大会で発表し、高い評価を受け、大会長賞を授与されるとともに学会誌に掲載された。現在、ラットを用いた生体レベルの実験を行い、データ処理プログラムの改良、コイルの均一性の向上によるさらなる感度の向上に取り組んでいるところで、より一層有用性が高まり広く普及することを期待している。
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