中性子捕捉療法におけるサイクロトロンを用いた加速器中性子源は研究用原子炉中性子源と比較して治療ビーム・全身被ばく線量のうち高速中性子成分の寄与が大きく、熱中性子線、ガンマ線線量以外にも高速中性子成分を正確に抑える必要がある。本研究では光ルミネッセンス線量計の蛍光特性に着目し、さらに高性能蛍光顕微鏡を用いて光ルミネッセンス内で生成された荷電粒子(中性子とコンバータによって発生する)の軌跡情報を解析することにより、ガンマ線、熱中性子線、速中性子線を分離して測定手法を提案している。本年度は(1)ガンマ線による蛍光強度の線量換算校正と、(2)中性子コンバータを用いたガラス線量計中の荷電粒子の軌跡情報の取得を実施した。(1)線量換算の校正では60Coガンマ線を板状ガラス線量計に照射し、最適化された光学フィルターを蛍光顕微鏡に組み合わせることで、ガラス線量計からの蛍光強度とガンマ線の線量値が良い線形性を示すことを確認することができた。(2)荷電粒子の軌跡情報の取得では、高速中性子コンバータとして高密度ポリエチレン、熱中性子コンバータとして6LiFと板状ガラス線量計を組み合わせた線量計を開発した。241Am-Be中性子源からの高速中性子をポリエチレンで減速した中性子源-ガンマ線混在場において線量計の照射試験を実施した。照射後に蛍光顕微鏡で蛍光強度を観測したところ、高速及び熱中性子用ともに、荷電粒子の軌跡による蛍光スポットを確認することに成功した。また、ガンマ線による蛍光強度分布も確認することができた。次年度は本年度の成果を踏まえて、コンバータの最適化を実施し、高強度中性子源を用いて蛍光スポットの線量依存性を調べ、線質弁別可能な線量計の実現を目指す。
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