中性子捕捉療法におけるサイクロトロンを用いた加速器中性子源は研究用原子炉中性子源と比較して治療ビーム・全身被ばく線量のうち高速中性子成分の寄与が大きく、熱中性子線、ガンマ線線量以外にも高速中性子成分を評価する必要がある。本研究では光ルミネッセンス線量計の蛍光特性に着目し、さらに高性能蛍光顕微鏡を用いて光ルミネッセンス内で生成された荷電粒子(中性子とコンバータによって発生する)の軌跡情報を解析することにより、ガンマ線、熱中性子線、速中性子線を分離して測定手法を提案している。本年度は開発した手法を用いて(1)線質弁別評価試験及び(2)サイクロトン加速器中性子源を用いた人体等価水ファントムの照射試験を行った。 (1)昨年度の成果で、中性子捕捉療法の照射場では中性子コンバータの有無による差引きによって線量評価することが望ましいことが分かったが、その成果に基づき、ガンマ線線量計用として濃縮LiF遮蔽材で囲んだガラス線量計と、熱中性子計測用として3300ppmの窒化ボロンで囲んだガラス線量計、高速中性子用としてアルミニウムで囲んだガラス線量計の照射試験を行った。線量率を変化させて照射試験を実施したところ、濃縮LiF遮蔽材に入れたガンマ線用線量計は従来の熱蛍光線量計とほぼ同等の結果を示した。また熱中性子用のガラス線量計の出力は熱中性子束と比例関係にあることから、熱中性子線量モニタとしても適応できることを確認することに成功した。高速中性子用のガラス線量計は感度が低かったため、感度を上げる必要があることが分かった。 (2)本手法を用いて人体等価水ファントムを用いた照射試験を行ったところ、従来の熱蛍光線量計や金、アルミニウムの放射化を用いた手法と同等の結果を得る事ができたことから、本手法の有用性を確認することができた。
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