研究概要 |
X線CTはX線医療診断の中でも胃透視検査とならんで比較的被ばく量が高いことが知られている。本研究の目的は、X線CT検査のX線源として偏光X線源、単色X線源を利用することで、X線被ばく量の低減をめざすことにある。より具体的には、1)偏光X線源をX線源として照射し、その偏光方向を胴体の長手方向にそろえることで散乱X線の再吸収を軽減するアイデア、2)単色X線ビームを被検査体に照射しその散乱X線を測定することでビーム軸上の情報を得るアイデアを独立に検討する。 今年度は、両手法に関してシミュレーション(EGS,GEANT4)を開始した。現時点でGEANT4を使用した計算は完了していないが、X線の光電吸収とコンプトン、レイリー散乱を計算する手法は確立できた。EGSを使用した初歩的な概算では、上記1)のアイデアに関して長手方向に散乱されるイベントをおよそ1/2に減少できるという見込みを得ている。GEANT4で人体モデルに対する計算を行うのが来年度の課題となる。一方、デモンストレーション用実験の装置として、マルチアノード型光電子増倍管とシンチレータブロックを組み合わせた検出器システムをくみあげた。この装置はX線の入射位置検出とともの偏光方向の測定もできる。さらに、今年度、超小型のX線発生装置を導入し、実験室内で約90%の偏光度をもつ偏光X線ビームを作成することに成功した。この装置は、放射光施設のビームラインを利用する代替になるばかりでなく、将来的に実用的な偏光X線源を開発するためのヒントにもなる。これら今年度に開発した装置を組み合わせて、上記のアイデアを実証するデモンストレーション実験を行うのが来年度の課題となる。
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