1. コロニーアッセイ法によるギメラシルの放射線増感効果: 1.0mMのギメラシルを48時間添加後に照射すると、コントロール群と比較してギメラシル添加群の生存率は有意に減少した。これはDLD-1、HeLa、LC-11その他実験を行った全ての細胞でギメラシルによる放射線増感効果が確認された。ギメラシルの添加時間・濃度と放射線増感効果の関係を調べたが、添加時間は48時間、濃度は1.0mMに至るまで放射線増感効果が増加し、その後プラトーに達した。一方、実験を行った全ての細胞においてギメラシル単独での殺細胞効果は認められなかった。 2. 放射線誘発リン酸化ヒストンH2AXフォーカスの計測: 放射線照射後1時間で核内のH2献フォーカス数は上昇し、ギメラシル添加群においてはコントロール群よりもH2AXフォーカスが多く残存し、DNA二重鎖切断修復の遅延が示された。特に照射24時問後にて有意な差を認めている。放封線を照射しない場合、ギメラシル添加群とコントロール群の残存H2AXフォーカス数に差を認めなかった。 3. DNA-PK活性欠損細胞と親細胞を用いるコロニーアッセイ法: DNA-PK活性欠損細胞(M059J、XR-V15B、xrs-5)とその親細胞(MO59K、V79、CHO-K1)に対して、コロニーアッセイ法によるギメラシルの放射線増感効果を検討した。DNA-PK活性欠損細胞においては、その親細胞と比較した場合に強い放射線増感効果を認めた。相同組み替え修復に欠損のあるGM7166VA7細胞においては、ギメラシルによる放射線増感効果は認められなかった。 4. ギメラシルのDNA-PK活性および細胞周期に与える影響: 5つの細胞株においてDNA-PK活性に対するギメラシルの影響を調べたが、コントロール群とギメラシル添加群において差を認めなかった。またギメラシルは細胞周期に対して影響を与えなかった。 以上より、ギメラシルの放射線増感効果は、DNA2重鎖切断修復経路の相同組換え修復の阻害によると考えられた。
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