研究概要 |
(はじめに)従来の癌幹細胞同定法は,CDマーカーとSP細胞の2つによって主になされてきたが,未だ癌幹細胞が見いだせていない癌腫が多数あることと,網羅的な手法であるため効率性の面で問題があった.この様な状況のなかで従来の方法とは異なる視点から癌幹細胞の新規同定法を開発することは大きな意義がある. (目的)癌幹細胞では糖代謝活性が低下しているという仮説を設定した.蛍光標識グルコース誘導体2-NBDGを用いて,各癌細胞株の細胞内グルコース濃度に応じて細胞群を分離することで糖代謝活性に基づいた癌幹細胞の同定法を確立する. (結果)本年度は初期条件の設定を目的とした予備実験とマウス皮下移植実験を行った.(1)FACSおよび蛍光顕微鏡にて2-NBDGの癌細胞株内への取り込みを確認した.(2)2-NBDGの至適濃度の検証:各癌細胞株における測定可能濃度を検討し,20μm/mL以上が解析可能な濃度であることを確認した.(3)2-NBDG反応時間と蛍光強度の検討:2-NBDG各濃度において40~60分以上の反応時間で蛍光強度がプラトーに達するのを確認した.(4)2-NBDG反応後の保存条件による蛍光強度の変化の検討:4℃冷却保存1時間後に蛍光強度の減弱が抑制された(2-NBDG反応後から細胞分離までの一定時間,蛍光強度を一定に維持し得ることが確認できた).(5)動物実験:通常培養した癌細胞株に2-NBDG処理を行い,蛍光強度の強弱に応じて細胞群を分離し,各々の細胞群をNOD/SCIDマウスに皮下移植した.現在、腫瘍の生着率および経時的変化について検討中である.
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