研究概要 |
siRNAナノキャリアの構築に関しては、側鎖に1,2-diaminoethane構造をpolyaspartamide誘導体[PAsp(DET)]の側鎖にステアロイル基を導入したPAsp(DET-stearoyl)を合成し、そのsiRNAナノキャリアとしての性能を評価した。その結果、PAsp(DET-stearoyl)/siRNA複合体は10%血清中で高い安定性を有しており、ヒト膵臓がんPanc-1細胞に対して毒性を示すことなく、VEGFやBcl-2等の内在性遺伝子を効率的にノックダウンできることが明らかになった。また、ポリエチレングリコール(PEG)と上記のPAsp(DET-stearoyl)がジスルフィド(SS)結合で連結されたPEG-SS-PAsp(DET-stearoyl)を合成し、表面がPEGで被覆されたsiRNAナノキャリアを構築し、in vitroにおいて効率的な遺伝子ノックダウン効果を示すことを確認した。一方、PHD2-siRNA発現プラスミドの遺伝子導入によるマウスの下肢虚血モデルの治療実験に関しては、マウスの左足の動脈(femoral artery)を切断することによって下肢虚血モデルを作成し、ポリエチレングリコール-ポリL-リシン(PEG-PLL)を基本骨格とするナノキャリアを経静脈的投与に四肢近位での一時的駆血を併用したハイドロダイナミクス法を応用した手法によって骨格筋に投与した。その結果、レーザードップラー血流計による血流画像化によってPHD2-siRNAの発現に基づく下肢における血流の改善が認められた。本効果は、ナノキャリア投与群においてnaked siRNA投与群よりも有意に高いことが確認された。
|