siRNAナノキャリアの構築に関しては、前年度までに開発したsiRNA/PAsp(DET-stearoyl)複合体ならびsiRNA/PEG-SS-PAsp(DET-stearoyl)複合体のin vivo機能評価を行った。ヒト膵臓がんBxPC3皮下移植モデルに対して、VEGFを標的としたsiRNAを搭載したナノキャリアを全身投与することによる治療効果を評価したところ、siRNA/PEG-SS-PAsp(DET-stearoyl)複合体は有意な制がん活性を示すことが明らかになった。また、アニオン性高分子であるポリアスパラギン酸とsiRNAを細胞内環境開裂性のジスルフィド結合で連結したシステムに関してもポリカチオンと複合体化することによる顕著な細胞内取り込み量の増大と遺伝子ノックダウン効率の向上が確認された。今後、これらのシステムを組み合わせることによってさらなる活性の向上が期待される。一方、PHD2-siRNA発現プラスミドの遺伝子導入によるマウスの下肢虚血モデルの治療実験に関しては、in vivoで優れた遺伝子発現効率を示すことが確認されているpDNA/PEG-PAsp(DET)/コンドロイチン硫酸三元系複合体によってPHD2-siRNA発現プラスミドの導入を行った。その結果、所見に基づく運動機能の回復のスコアリング評価、レーザードップラー血流計による血流画像化、血管造影のすべてにおいて血流量の改善に基づく下肢虚血に対する治療効果が確認された。今後は、虚血部位の組織切片の免疫染色を行い、再生された血管の質に関して検証するとともに本遺伝子導入法の安全性に関して検討する予定である。
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