研究課題
siRNAナノキャリアの構築に関しては、PEG-ポリアニオンブロック共重合体とsiRNAとリン酸カルシウム(CaP)から構築される無機-有機ハイブリッド型ナノ粒子のsiRNAキャリアとしての可能性について検討を行った。ここでは、PEG-ポリアニオンのアニオンセグメントとして電荷可変型ポリマーPAsp(DET-Aco)を利用することによって、CaPナノ粒子による遺伝子ノックダウン効率の向上が確認された。また、ヒト膵臓がんBxPC3皮下移植モデルに対して、VEGFを標的としたsiRNAを搭載したナノキャリアを全身投与することによる治療効果を評価したところ、CaPナノ粒子は有意な制がん活性を示すことが明らかになった。さらに、本システムに関しては、ルシフェラーゼ(Luc)を発現する膵臓がんを自然発生するトランスジェニックマウスに対してCaPナノ粒子を投与したところ、Lucの効率的なノックダウンが確認された。このように本研究では世界で初めて自然発生がんモデルに対してin vivoで有効性を示すsiRNAナノキャリアの開発に成功した。一方、PHD2-siRNA発現プラスミドの遺伝子導入によるマウスの下肢虚血モデルの治療実験に関しては、前年度までに、所見に基づく運動機能の回復のスコアリング評価、レーザードップラー血流計による血流画像化、血管造影において血流量の改善に基づく下肢虚血に対する治療効果が確認された。そこで本年度は、虚血部位の組織切片の免疫染色を行い、再生された血管の質に関して検証した結果、CD31陽性の血管内皮細胞がα-SMA陽性の平滑筋細胞で覆われた成熟した血管が形成されていることが確認された。以上の結果より、本研究の戦略の下肢虚血モデルの治療に対する有効性が明らかになった。
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