研究概要 |
炭酸アパタイト法により抗癌剤、siRNAを封入し大腸癌細胞へのデリバリーを試みた。 1.薬物のデリバリーとしてはシスプラチン、アドリアマイシンが電荷の関係上、効率的に炭酸アパタイトへの封入が可能であった。電子顕微鏡で粒子サイズを測定すると60-80nmの粒子が数個集まり200nm程度のサイズとなっていた。通常、腫瘍血管のサイズは~700nm程度であるので癌組織での受動運搬には適したサイズである。この粒子はpH5.8-6.0で破壊され、癌細胞のエンドソームにおいては同程度の酸性pH環境であるため、速やかにバーストするものと推察される。アドリアマイシンの発する蛍光を利用して癌細胞への取り込みを追跡すると、炭酸アパタイトに封入することで、短時間で細胞内に侵入することができることが分かった。 動物に投与するために少量の溶媒にアドリアマイシン封入炭酸アパタイトをloadする際に、ナノ粒子の重合が起き、そのままでは血管内への投与は困難であった。そこでアルブミンやトランスフェリンなどの重合阻害作用をもつ物質を添加することで重合を回避する方法を試した。 (現在,In vitro実験の部分を論文を投稿中) 2.炭酸アパタイトにFITC標識したsiRNAを封入し細胞内への取り込みを追跡した。リポフェクション法よりも早くに細胞内に入り、survivinなどの蛋白発現を速いタイミングでノックアウトすることができた。ヌードマウスの尾静脈に投与すると肝臓や腎臓などへの取り込みはFITC標識siRNA単体の方が多く、皮下腫瘍への取り込みは炭酸アパタイトに封入したFITC標識siRNAが多くみられた。このことは、サイズコントロールされた炭酸アパタイト体は正常の腫瘍血管からは漏出しにくく、腫瘍血管選択的に漏出することを示唆し、炭酸アパタイトによるsiRNAのDDSは腫瘍の標的化に適していることを示した。(動物実験をリピートし論文作成予定)
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