本研究では拒絶反応を引き起こすことなくIFN-γ産生NK/NKT細胞を肝臓に誘導し、HCV肝炎の移植後再発を抑止し得る新規免疫細胞療法を開発するために、末梢血由来の培養CD3^-CD56^+NK細胞とCD3^+CD56^+NKT細胞の抗HCV機構を解明し、HCV患者に対する肝移植後根治療法として、新規免疫細胞移入療法の臨床導入を目的とする。 末梢血由来の培養CD3^-CD56^+NK細胞とCD3^+CD56^+NKT細胞は、IL-2/抗CD3抗体を加えた自己血清添加のX-VIVOメディウムで最も効率よく増殖することが可能であった。28日後の培養細胞のフェノタイプ解析では、大部分がCD3^-CD56^+細胞あるいはCD3^+CD56^+細胞であり、その比率には個人差があった。また、HCVレプリコンアッセイによる抗HCV効果解析では、誘導細胞中にCD3^-CD56^+細胞/CD3^+CD56^+細胞の比率が高いほど、ウイルス増幅抑制能も高い傾向を示した。しかし、誘導細胞に抗CD3抗体によりパルス刺激を加えると、その比率によらず高い抗HCV効果を獲得し得ることが確認できた。細胞内サイトカイン染色によるフローサイトメトリーの解析では、誘導CD3^-CD56^+細胞は、CD3^+CD56^+細胞に比べIFN-γ産生能が高いが、抗CD3抗体パルス刺激によって両細胞群は同等のIFN-γ産生能を獲得することが分かった。さらに、培養増殖CD56+細胞をHCV感染ヒト肝細胞キメラマウスに細胞移入を行うと、有意なHCV感染防御を示した。以上より、HCV患者に対する肝移植後根治療法として、末梢血由来の培養CD3^-CD56^+NK細胞とCD3^+CD56^+NKT細胞の新規免疫細胞移入療法は有効な手段となりうる可能性が示唆された。
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