研究概要 |
<目的>癌関連分子に対する機能制御能を持つ親和性ペプチドを設計し、抗腫瘍効果を検証することを目的としている。今年度は膵癌細胞を標的にした。乳癌細胞では、Hedgehog(Hh)シグナルが活性化し増殖に必要である。Hhシグナルの細胞表面受容体であるPtched1に対する親和性ペプチドを合成し、その抗腫瘍効果を検討した。<方法と材料>以前、我々は、Ptched1上の特定配列に対するポリクローナル抗体を作成し、この抗体がPtched1のHhシグナルに対する抑制的な効果を安定化しHh依存性癌細胞の増殖を抑制することを報告した。今回、この標的となるPtched1上の配列に対する親和性のある7種のペプチド候補を、バーチャルスクリーニングを用いて決定した。これらのペプチドを乳癌細胞であるMCF-7と共培養した時の細胞数の変化を、MTT assay,フローサイトメトリーにより検証した。また、乳癌細胞株中の癌性幹細胞分画であるCD24-/low,CD44+の割合の変化をフローサイトメトリーにより分析した。乳癌幹細胞分画(CSC)は、マウスへの移植実験で確認された。<結果>7種中3種のペプチドがMTTで乳癌細胞の増殖を抑制することが確認された。これは、フローサイトメトリーでも確認された。これら抗腫瘍効果が望まれるペプチドと共培養環境下の乳癌細胞でのCD24-/low,CD44+分画は、非共培養下と変化を認めなかった。マウスへ移植されたMCF-7のCD24-/low,CD44+分画は、CD24+分画に比較し乳癌細胞が生着しやすい傾向にあった。<考察>考案された複数のペプチド候補が、乳癌細胞の増殖を抑制し、乳癌治療の新たな選択肢になる可能性が示された。CSCへの効果は限定的であることが予想された。
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