(目的)前年度までに、我々が設計したPatched1(Ptch1)親和性ペプチドが、Hedgehog(Hh)シグナルに対する抑制効果を持ち、これを通じて膵癌細胞の増殖抑制効果を示すことが明らかにされた。しかし、これらの効果が、設計通りにリガンドとPtch1の結合阻害を通じて機能していることは明らかになっていない。今後、新規の親和性ペプチド合成による新薬開発を目指すためには、当該ペプチドが設計通りに標的蛋白質に対し親和性を有していることを明らかにする必要がある。本ペプチドは非常に低分子でありウエスタンブロッティングが非常に困難であるため、ペプチド投与によりリガンドとPtch1の結合が阻害されることを免疫染色で証明することにより、間接的にペプチドとPtch1の親和性を証明することとした。(材料と方法)AsPC1細胞(2x104/well)を、24-ウェルプレートのカバーグラス上で一夜培養した後に、10μg/mLのA、B、CまたはGペプチドを含む新しい培地にかえられた。24時間培養後、スライドを8%フォルムアルデヒドで固定し、抗SonicHedgehog(Shh)抗体で染色した。最終的に、レーザー走査型共焦点蛍光顕微鏡下で視覚化された。(結果)ペプチドB、CおよびGと共培養されたAsPC1細胞の染色レベルはペプチドA(対照ペプチド)と共培養された細胞の染色レベルより低かった。(考察)今回得られた染色結果より、我々が設計した合成ペプチドが有する抗Hhシグナル作用は、ペプチドがPtch1と相互作用することでShhとPtch1の結合部位を阻害するという当初の設計通りの機序で機能していることが予想された。これらの事実より、この親和性ベプチドが癌治療のみでなく、drug deliveryや局在診断の分子プローブとしても有用である可能性を示せた。
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