昨年度の成果を踏まえ、今年度ではより詳細にiPS細胞から樹状細胞(DC)への分化誘導過程中各ステップの細胞において解析を行った。マウスiPS細胞をOP9細胞と共培養し、OP9上で最初のステップにおいて、造血幹細胞に発現するCD309、CD34が確認でき、この時点では樹状細胞の表面分子は発現していないことがわかった。これらの細胞を新たに用意したOP9細胞上に播種し、GM-CSFを添加して、樹状細胞への分化誘導を行い、造血幹細胞の表面分子は消え、骨髄由来樹状細胞(BM-DC)と同様、CD11c、MHCクラスII、共刺激分子のCD80、CD86発現していることが分かり、ギムザ染色による細胞形態の確認もその差が見られなかった。また、この未成熟状態が7~10日が保たれ、BM-DC(2~3日)より遥かに長く維持することが出来、様々なサイトカインの添加するによって、DCの成熟・活性化、或は御製性DCへの分化誘導が出来ると期待したい。さらに、抗原提示能として、T細胞に対する刺激を混合リンパ球培養(MLR)にて調べたところ、これもBM-DCと同様にiPS細胞由来DCの数にT細胞増殖が比例していた。これらの結果からiPS細胞からDCに分化誘導できたことが示唆された。一方、iPS細胞由来のDCを医療に用いる際、非ヒト動物等に由来未同定成分を含まない培養液を用い、かつ、マウス由来のフィーダー細胞を用いない分化誘導法の開発が必須であるため、OP9細胞の代わりにBMP-4等サイトカインを用いて、iPS細胞からDCへの分化誘導を試みた。OP9上での培養と同様、各ステップにおいて、造血幹細胞或はDCに発現する表面分子の確認を行った。今後、未成熟DC、制御性DCの分化誘導及びその機能解析を引き続き行う予定である。さらに、今年度では、B6マウスからBDF1マウスへのリンパ球輸入による急性GvHDモデルも確立でき、免疫細胞療法の実施へと繋げていきたいと考えている。
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