1、腫瘍に対する理想的な診断・治療法を確立し、従来の問題点を解決する手段として、発光プローブによる新たなバイオイメージング法(生体内におけるより定量的なイメージング法)の開発を目的として、以下の基礎研究を行なった。 (1)分子プローブの作成:分泌型ルシフェラーゼをコードしたプラスミドをもちいて、その効果を細胞レベルで確認した(細胞内と培養液中のルシフェラーゼ活性を測定し、生体にて十分なシグナルが得られる条件などを検討した)。 (2)また、プローブ安定発現細胞株(固形癌の細胞株に対して)を樹立した。 2、生体内リポーターとしての有用性を検討した。 (1)分泌型ルシフェラーゼ遺伝子の安定発現細胞株(ヒト膵癌細胞株)によるヌードマウス腹腔内癌播種モデルを作成した。 (2)マウスモデルへのプローブ導入細胞の移植と生体内での有用性を検討した。 これらのプローブを遺伝子発現のリポーターとして使用可能かどうかを検討した。腹腔内に播種進展した腫瘍において、腫瘍自体からのシグナルの強度をイメージングにて評価し、また血液中に分泌されたルシフェラーゼからのシグナル強度を測定した。同時に、実際の腫瘍進展(原発巣および転移巣の拡大の程度)を経時的に評価した。その結果、従来行なわれていた腫瘍自体からのシグナルの測定よりも、血液中に分泌されたルシフェラーゼの活性を測定したほうが、実際の腫瘍細胞の総量(生きている腫瘍細胞)を反映していることが示された。これにより、分泌型の発光プローブを用いることの生体での有用性が示された。
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