【目的】本研究では有茎腸管内に肝組織を移植して安価で効果的な補助肝臓を作成することを目的としている。肝不全に陥った患者を救命するには現在では肝移植が最も効果的な治療法であるが、ドナー不足の現状を見ると何らかの補助肝臓が求められている。また、急性肝不全症では効果的な補助肝臓があればbridge useとしてこれを用いて急性期を乗り切り元の肝臓の再生を期待することも出来る。しかし、体外型補助肝臓装置は複雑で、また、高価である。本研究はGuptaらの開発した有茎腸管内肝組織充填式移植法を参考にして効果的な補助肝臓の開発をめざして行われた。【対象と方法】雄性ウイスター系ラットをジエチルエーテル麻酔下に開腹し、空腸起始部から数cmのところで長さ3cmほどの有茎腸管を作成する。遺残空腸は7-0絹糸で端々吻合を行う。この時点で肝左葉+中葉を切除しシャーレの中で切除肝をメスで1mm角以下に細切する。有茎腸管を脱転しメスで粘膜を削いだのち元に戻し細切した肝組織片をこれに充填して断端を閉鎖する。これを腹腔内、遺残肝にそれぞれアロンアルファで固定し、7日、10日、30日、40日後に犠牲死させ肝組織片充填有茎腸管を摘出し組織学的に検討した。【結果】7日目の充填肝組織は腫大し一塊となり中心部分は壊死に陥っていたが腸管壁に接する部分の肝実質細胞はviableで小葉構造も保存され、PAS染色でもグリコーゲン強陽性であった。30日を過ぎても中心部分は壊死になっていたが、腸管壁に接する部分はviableで胆管上皮の増生も認められた。しかし、その部分は肝実質細胞というより非実質細胞の様相を呈していた。【結語】有茎腸管の中では皮下や腹腔内などの他部位では壊死してしまう1mm角ほどの肝組織片でも融合して腸管壁に生着し、生存することが確認された。肝組織片充填有茎腸管は有効な補助肝臓になる可能性が示された。
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