平成21年度は1、大型再生肝臓を作るための技術開発、2、成体肝臓片から再生させる技術開発、3、マウス肝臓を漿尿膜に生着させる技術開発を目的とした研究を行った。その結果、1、に対し、40日に及ぶ長期間培養を目的にダチョウの卵を使う実験を行ったが、ニワトリ卵と異なり、厚く硬い卵殻と、極めて感染しやすく、且つ軟弱な体質を持つ胚子の特徴がわかり、克服しなければならない検討課題が多く見つかった。そこで感染源と感染経路を調べ、今後の卵殻消毒の目安を立てた。また卵殻に窓を開ける時期と、その方法を検討し、電動ドリルで胚子に障害を与えずに窓を開ける方法を開発した。2、について、再生肝臓に発生する洞様血管は造血によって作られることが示唆されていた事から、肝臓細胞と造血幹細胞の並行移植が必要と考え、造血幹細胞の培養を試みることにしていたが、正常発生で生じる洞様血管の由来を確認しておくべきものと考え、正常肝臓発生を免疫組織化学的に検討したところ、造血により広がった空間を間葉由来と思われる内皮細胞原基が包み込むようにして洞様血管が作られることが判ってきた。また培養肝細胞のシートを漿尿膜上に移植する撞術開発が行われ、シートの回収技術を確立中である。3、については、一時的な生着は起こるが、ニワトリ漿尿膜血管とマウス再生肝臓内に発生した洞様血管の吻合が生じないため、十分な増殖に至らないことが明らかになり、両血管吻合を起こすための仲介物質を探ることにした。候補の一つであるFLPを移植時に滴下したところマウス肝臓片の生着が速やかに生じるが、血管吻合は起きないことが明らかになった。 以上の結果から、次年度はダチョウ胚子が安定した発生を行う環境を確保することと、血管吻合を仲介する物質の検討、骨髄由来造血幹細胞から洞様血管内皮が発生するか否か、そして肝細胞シートと造血幹細胞の並行移植で漿尿膜中に再生肝臓を得るための検討を行うことになる。
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