研究概要 |
本研究では、悪性胸膜中皮腫の進展形式に着目し、腫瘍細胞上の接着分子発現および情報伝達を解析することにより、腫瘍の発育・進展を制御する手法を見出すことを目的としている。悪性胸膜中皮腫症例の胸水中に多量に存在するヒアルロン酸のレセプターであるCD44は、悪性胸膜中皮腫細胞株の4株(K921MSO, L324MSO、ACC-MESO-1,ACC-MESO-4)において高発現していることを昨年度の研究において認めた。今年度は、これら4株(K921MSO,L324MSO、ACC-MESO-1, ACC-MESO-4)において細胞表面分子であるβインテグリンもそれぞれに高発現していることを認めた。さらにQIFKIT法により、細胞表面機能分子の1細胞あたりの分子数を算出したところ、ヒアルロン酸添加24時間後に、CD44の発現低下を認めた。さらにヒアルロン酸による悪性胸膜中皮腫の増殖能の変化をMTTアッセイにおいて検討したところ、添加後24時間後に、ACC-MESO-1の細胞増殖を有意に増加させた。また、ACC-MESO-4、K921MSOにおいても、細胞増殖を増加させる傾向を認めた。つぎに悪性胸膜中皮腫の浸潤能をマトリゲルインベージョンチャンバー法により検討したところ、ヒアルロン酸の添加により、ACC-MESO-1において、浸潤能の増加が認められた。これらのことより、ヒアルロン酸添加により、胸膜中皮腫細胞は、増殖能および浸潤能が亢進することが明らかとなった。今後も、CD44、βインテグリンなどの表面分子に対するヒアルロン酸を介した細胞増殖、進展のメカニズムについて、解明を続ける。
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