偏光を用いて複屈折という指標から組織の機能を可視的に同定を試みると共に、偏光の特性を生かした脳神経外科手術に有用な顕微鏡下での観察系を開発することが本研究の目的である。まず前者の検討のため、組織の微弱な複屈折の観測条件を通常の偏光顕微鏡下に小生物を実験に用いて設定した。その際、波長板(鋭敏色板)の挿入角は、通常用いる45度ではなく、条件によっては小さい挿入角の方が色調のコントラストが強く観察できることを確認した。これは透過・反射観察ともに同様であった。複屈折の同定のみであれば赤色や緑色など単色光の利用も有用であったが、形態の把握が不充分となるため本研究の目的には必ずしも沿うものではなかた。諸条件を暫定的に設定して上記の系で動物実験に移行した。ラット人工呼吸管理下に、坐骨神経の電気刺激を行い運動感覚野ならびに坐骨神経の観察を行った。鏡視下肉眼では明かな複屈折の変化の同定はできなかった。表面の散乱光成分の除去を目的として近赤外光を用いても同様であった。 ハイスピードカメラを用いて単色光で同様の検討を行い、加算平均による処理も試みたところ、刺激に伴うなんらかの変化が誘発されるようであったが、非常に小さな変化でありまた振動などに伴うアーチファクトの除去が困難であり複屈折の変化とは断定できるものではなかった。本研究のようなマクロな領域での観察はラットを使った実験系はかならずしも適切ではないこともわかり、次年度以降は臨床で偏光観察の可能な機器を作成することを優先し、その過程で近赤外光な照明の適切な波長を明らかにしていくこととした。
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