I.膠芽腫血管内皮細胞に特異的な遺伝子の同定 VEGF受容体ノックアウトマウスとワイルドタイプマウスの発生胚(8.5日)で発現の違う13個の遺伝子発現を、膠芽腫内皮細胞とHUVEC(正常血管内皮細胞)のmRNAから定量的RT-PCEで比較した。既知の血管新生に関わる遺伝子のほかに、機能未知の遺伝子が同定された。これらの遺伝子はVEGFに関与しない血管新生因子と考えられ、今後は、膠芽腫内での未知の遺伝子の局在をin situ hybridizationで確認する。 II.Glomeruloid vesselの切り出し 膠芽腫組織のホマリン固定、パラフィン切片からのlaser microdissectionを予定したが、技術的に十分量のRNAを抽出することが難しく、凍結切片からのRNA抽出を試みている。しかし、凍結切片ではglomeruloid vesselの構造同定か難しく、さらなる検討が必要である。 III.膠芽腫血管内皮幹細胞の同定 CD133抗体による免疫染色を行うと、膠芽腫Glomeruloid Vesselの内皮細胞および周皮細胞に陽性所見がみられ、VEGF受容体の中でもVEGF中和抗体の作用効果を表すphosphorylated VEGFR2の陽性細胞との分布が重複した。腫瘍血管に内皮幹細胞が存在し、VEGF中和抗体の作用機序のひとつとしてこれら内皮幹細胞を傷害する機序が考えられた。今後はCD133陽性内皮細胞の機能解析として他の未知の血管新生関連蛋白の発現を評価する。 IV.硬膜動静脈奇形の血液検体の収集 ヒト脳内硬膜動静脈奇形の血管造影による診断・治療時に動静脈奇形のproximalとdistalに挿入されたカテーテルから血液を採取し-80度で保管している。これまでに3例の検体が収集された。5例の集積のあと、血液内の血管新生因子を網羅的に計測することにより、これまで報告のない硬膜動静脈奇形の発症に関する血管新生の役割および治療の標的分子を同定する。
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