研究概要 |
I.Laser capture microdissection(LCM)によるglomeruloid vessel特異的遺伝子の同定:膠芽腫組織凍結切片からLMDでglomeruloid vessel、small vessel、それ以外を分けて十分量のRNAが採取可能な、蛍光免疫染色の至適条件を求めた。次にsmooth muscle cell actin(SMA)染色によるglomeruloid vessel、CD34染色によるsmall vessel、その他の部分を3回の連続切片5枚よりLCMを行い、全ての産物よりRNAを抽出した。抽出したRNAからマイクロアレイで遺伝子発現を調べると、small vesselに比べてglomeruloid vesselに特に高発現する遺伝子として(1)Chemokine ligand 2,(2)Endoglinを同定した。来年度はこれらの分子のGlomeruloid vesselにおける機能を調べる。 II.膠芽腫血管内皮幹細胞の同定:32例の神経膠腫組織のパラフィン切片でpVEGFR2(リン酸化VEGF受容体2)とCD133抗体の二重染色を行なった。膠芽腫ではpVEGFR2陽性の血管内皮細胞は同時にCD133陽性であり、その起源として血管内皮増殖部分にみられるGFAP陽性細胞が推測され、腫瘍血管内皮幹細胞をみている可能性が考えられた。pVEGFR2陽性の2例ではVEGF中和抗体(bevacizumab)の反応が良好なのに対して、pVEGFR2陰性の2例では反応が悪く、VEGF中和抗体の治療反応性を表すバイオマーカーになりえる。来年度はIで同定されたglomeruloid vesselに高発現する分子と血管内皮幹細胞との関係に焦点をあてる。 III.硬膜動静脈奇形の血液検体の収集:ヒト脳内硬膜動静脈奇形の血管造影による診断・治療時に動静脈奇形のproximalとdistalに挿入されたカテーテルから血液を採取し-80度で保管している。5例の集積を終えたところで、血液内の血管新生因子を網羅的に計測することにより、硬膜動静脈奇形の発症に関わる因子、治療の標的因子、治療のバイオマーカーの同定を試みる。
|