研究概要 |
膠芽腫に特異的にみられるGlomeruloid vessel(GV)には血管内皮幹細胞が存在し、血管内皮幹細胞を根絶できれば腫瘍血管が形成されず、膠芽腫の根絶につながる萌芽的発想を目的とした。 1.GVにみられる血管新生因子の意義 前年度までに、膠芽腫内の2つのタイプの新生血管、GVとsmall vesselを、免疫染色凍結切片からlaser capture microdissectionで別々に採取し、採取物からRNAを抽出し、両者の間の遺伝子の違いをマイクロアレイで網羅的に検索したところ、GVだけで発現が高い血管新生に関わる2つの遺伝子(chemokine ligand 2、endoglin)が明らかとなった。 この2つの蛋白のendoglinについて、ヒト脳腫瘍サンプルの免疫組織化学でその局在は、腫瘍血管、特に周皮細胞のマーカーであるsmooth muscle cell actin(SMA)との2重染色ではSMA発現のあるGVの内皮細胞に発現が強くみられた。CD133との2重染色ではendoglinとCD133両者に陽性細胞がGV内の内皮細胞にみられた。Endoglinの機能解析についてendoglinに対するsiRNAを作成し、vitroでHUVECの遊走能を検討した。 GVは内皮細胞の遊走に関係するendoglinを発現し、内皮幹細胞発現の候補の可能性を示した。 2.硬膜動静脈奇形(dAVF)の発生に係わる血管新生因子の同定 dAVFの近傍の血液サンプルの蛋白解析をマイクロアレイ(RayBioAngiogenesisAntibodyArray)を用いて測定した。末梢血液に比べてdAVF直前の血液で高い血管新生因子としてIL-1beta,PECAM1,VEGFR2,VEGFR3を同定した。これらはdAVFの発症に関わる因子、治療の標的因子、治療のバイオマーカーの可能性があり、さらに症例を蓄積して結果を明らかにする世手である。
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