腫瘍幹細胞は特殊な微小環境(ニッチェ、niche)に存在し、細胞環境に応答し分化制御のメカニズムを起動する。細胞環境に応答しダイナミックに変化する細胞内シグナルは多数存在することが明らかとなってきた。本研究計画では、低分子GタンパクRhoに注目した解析を推進した。Rhoは細胞接着で大きく活性化状態を変化する。特に、Rhoの下流分子mDiaは細胞間接着、細胞基質間接着からのシグナル伝達で重要な役割を担っている。脳腫瘍幹細胞のエピジェネティクス転換・分化誘導メカニズムを細胞内シグナルから解析を進め、Rho/mDiaシグナル操作による脳腫瘍幹細胞の分化誘導を試みることを目的とした。CD133プロモーターを用いた脳腫瘍幹細胞特異的な細胞動態およびシグナル活性のバイオイメージング技術開発に取り組んだが、申請者の手法で脳腫瘍幹細胞特異的な発現制御が困難であることが判明した。そこで新たな候補プロモーターの単離を進めている。脳腫瘍サンプルから単離したグリオーマ腫瘍幹細胞でのベクター導入に成功し、腫瘍幹細胞でのバイオイメージング解析を進め、腫瘍幹細胞の分化誘導におけるRho/mDiaシグナルの制御を同定した。
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