研究課題/領域番号 |
21659345
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
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研究分担者 |
福光 秀文 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (00308280)
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キーワード | 脊髄損傷 / 神経再生 / 運動機能回復 / 細胞移植 / 間質系細胞 / 神経栄養因子 / 細胞接着因子 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
1) 運動機能回復が真に軸索再生を伴っているかを確認する FGF-2で増殖が誘導される間質系細胞(FGF-2-induced fibronectirpositive cells:FIFs)を胸髄T10の位置で全切断後、損傷部位にFIFを移植すると、移植10日後より運動機能が回復し始め、3週以降では後肢を交互に動かし歩行に近い動作が可能になるまでに回復した。切断部の尾側に蛍光ビーズを注入し、逆行性に脳の赤核や大脳皮質運動野に蛍光ビーズが蓄積されることを明らかにした。すなわち、この運動機能回復が切断面を横切って軸索が再生したためであることを強く示唆する結果となった。この点を組織化学的に解析したところ、移植後のFIFの組織生着は良好であり、本来損傷部位に認められる空隙にもFIFが入り込み埋めていた。しかも移植組織の内部を再生軸索の指標であるGAP-43陽性の塾索が多数横断しているのが認められた。すなわち組織化学的にも軸索再生が起こっていることが示された。 2) FIF細胞の運動機能改善作用はどのような細胞機能や特性によるのか分子レベルで解明する 脊髄の髄膜を形成する線維芽細胞(meninx-derived fibroblast:MDF)はむしろ脊髄損傷修復を妨害すると言われており、FIF細胞とはかなり異なった性質をもつ。そこで脊髄の髄膜由来線維芽細胞(MDF細胞)とFIF細胞を同じ条件で培養してmRNAを調製して蛍光プローブを作り、同一DNAチップにハイブリダイズさせ、両細胞で発現の異なる遺伝子を探索し、見出した候補遺伝子の発現の違いをさらにRT-PCR法で確認した。その結果、間質系幹細胞のマーカーであるCD90(THY1)、CD105(ENG)、CD106 (VCAM1)のほか、血管内皮細胞のマーカーであるVE-cadherin、thrombomodulin、VEGFR-1の遺伝子発現が亢進していることを明らかにした。これらの結果はFIF細胞の発生由来を示唆していると考えられる。このほか、神経線維の発芽や伸展を促す神経栄養因子(NGF、BDNFなど)や細胞接着因子のN-cadherinが高い発現を示すことを確認し、FIFが神経突起や軸索の再生に有利な性質をもつことを解明した。
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