研究概要 |
1.ラフト形成阻害による破骨前駆細胞の増殖,分化,活性化への影響 破骨細胞分化において,さまざまな受容体タンパクやアダプター分子が脂質ラフトへ集積することが報告されていることから,Methyl beta Cyclodextrin(MBCD)による脂質ラフト形成阻害の影響を調査した.MBCD投与により,破骨細胞への分化能に変化は生じなかったが,前駆細胞の増殖が亢進した.このことから脂質ラフトは破骨前駆細胞の増殖を負に制御している可能性が示唆された. 2.破骨細胞におけるガングリオシド発現 脂質ラフトの主要な構成成分であるガングリオシドに着目し,どのようなガングリオシドが破骨細胞およびその前駆細胞に発現しているのか調査した.ガングリオシドは,セラミドを出発点としてさまざまな生合成酵素や分解酵素により発現が調節されている.生合成酵素や分解酵素の遺伝子発現解析のみではガングリオシドの発現変化を正しく理解できないため,Mass sepectroscopyを用いて実際の発現量を定量的に評価した.その結果,過去に報告のあるGM3の発現はほとんど観察されず,GD1が主体と考えられた. 3.ガングリオシド欠損マウスを用いた骨表現型解析 GM3合成酵素,GD3合成酵素,Ga1NacT遺伝子を全身性に欠損する3種類のマウスについては,骨表現形に明らかな変化は認められなかった.しかし,骨髄マクロファージを用いたin vitro培養細胞実験では,GM3合成酵素遺伝子欠損マウスの細胞の増殖能が亢進したのに対し,GD3合成酵素,Ga1NacT遺伝子欠損マウスの細胞では増殖能は抑制されていた.GM3合成酵素遺伝子欠損マウスでは上記で認められたGD1の発現が欠損していることから,GD1分子が破骨前駆細胞の増殖を負に制御している可能性が示唆された.
|