本研究においては分化過程におけるCD106(VCAM-1)抗原発現と非対称性分裂機構という間葉系幹細胞の細胞生物学的性質の解明を主目的とした。申請時には脂肪分化におけるCD106発現との関連を主目的として行ったが、平成21年度の成果から軟骨分化過程におけるIn Vivo組織でのCD106の発現と関節軟骨分裂部において知見を得たことから、今年度は以下の課題を中心に解析を進める. 1. In Vitro初代培養間葉系幹細胞を用いたCD106マーカーの発現意義の解析 ドナーより採取・単離した初代培養MSCをDiIで標識し、分裂を促した後にCD106陽性細胞との発現の相関をFACSにて確認する. 2. In Vivo間葉系組織を用いたCD106マーカーの発現意義の解析 1) 脂肪組織におけるCD106の発現解析 脂肪組織においてCD106陽性細胞の局在を解析する事でCD106の機能的意義を検討する. 2) 関節軟骨組織におけるCD106マーカーの発現解析 関節軟骨には表層部に局在する細胞が分裂する事から、前駆細胞あるいは軟骨幹細胞と呼ばれる細胞が存在する事が示された(Grogan SP 2009).この層の細胞はCD106陽性であることから、ウサギ膝関節内にDiIを注入し、経時的にCD106陽性細胞とDiI陽性細胞の共局在を確認する事で、In VivoにおけるCD106の機能意義を解析する. 3) ウサギ再生軟骨におけるCD106マーカーの発現解析 生後3ヶ月のウサギは修復能力が高く、軟骨欠損を加えても自己修復が促される.そこでウサギ膝関節に軟骨欠損再生モデルを作成し、その修復過程においてCD106の発現を解析する事でCD106の働きを解析する.
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