研究概要 |
本研究の目的は、成長軟骨板の分子制御メカニズムを解明し、より低侵襲な骨延長法を開発することである。具体的には、まず直線的に骨延長するために成長軟骨板における極性を決定する因子を同定し、骨成長の制御メカニズムを解明する。その後、我々の開発したdrug delivery system (Bone 2008, Int Orthop. 2008)を用いて、同定した因子や既知の因子(IGF-1,PTHrPなど)を骨端部に投与することにより、成長軟骨板を人為的に制御し、最終的には、これまで手術的に加療されてきた先天性または外傷性に生じた脚長差をより低侵襲に加療することである。極性を決定する因子を同定するため、その因子を有する細胞を同定することを、日本白色家兎を用いた動物実験にて、明らかにすることを試みた。 これまでに成長軟骨板の極性に関する実験は希少である。成長軟骨板の静止細胞層が極性を決定する因子を有することが、示唆されていたが、成長軟骨板の中の他の細胞層、すなわち増殖軟骨細胞層、肥大軟骨細胞層の軟骨細胞が極性を有するか否か明らかではなかった。当初の研究実施計画通り、兎の成長軟骨板を半分切り出し、極性を90度回転することにより、軟骨細胞の極性が変化する現象が起きる細胞層とその時期について明らかにすることができた。本年度の研究により、これまで不明であった細胞層についての極性因子の有無が判明した。このことにより、今後は極性を有する細胞層のみに限定して研究を進めることができ、研究の効率を高めることができる。組織マイクロアレイにて成長軟骨版の極性を規定する候補因子をいくつか挙げることができた。このそれぞれの候補因子について、実際に極性を規定する能力の有無や、極性に関わるstageなどを軟骨培養やin vivo実験にて確認し、最も強力な因子に焦点を当て研究を進めている。
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