1994年Brittbergらが発表した自家軟骨細胞移植法ACIの臨床応用は、全世界で2万例以上に施行されている。しかし、患者の正常軟骨部から採取する移植用の関節軟骨細胞(AC)は採取量に限界があり、改善すべき点がある。特に高齢者の場合の再生能が乏しいACは、培養増殖能が低く広範囲治療が困難であった。一方、継代しても高い増殖能が変わらない滑膜細胞(SY)は、間葉系幹細胞の存在と軟骨細胞への分化能が報告されている。 今回、我々が考案した新規培養法によって多量の細胞移植体を短期間で準備することが可能となった。本研究の目的は、ACとSYからなる軟骨滑膜混合細胞体を作製し、細胞移植体の性状を観察並びに分析して新規ACI法への利用の可能性を明らかにすることである。 日本白色家兎の膝由来のACとSYを培養して蛍光標識した後、高密度浮遊状態で振とう培養し混合細胞スフェロイドを作製した。細胞スフェロイドの性状はRT-PCR(1型と2型コラーゲンの発現)と組織学的な評価(トルイジンブルー、サフラニン0染色並びに免疫染色)を実施した。また、軟骨全層欠損部に5つの各条件から作製した細胞スフェロイドを移植し4週後の再生修復効果を検討した。 細胞スフェロイドは培養24時間から形成され、SYとAC混合比いずれにおいても作製が可能であった。通常培養条件下での異種細胞が混在する構造物を構築することは困難であるが、本研究の作製法では細胞同士の接触の機会が多く、種類の異なる細胞同士でも混合細胞スフェロイドの構築が可能であった。また、1型と2型の発現とトルイジンブルーの異染性とサフラニン0の染色性が乏しかった性状から分化と脱分化の細胞が混在すると推測された。ACへの分化可能な間葉系幹細胞を含むSYは高い継代増殖率を示し、ACの部分的な代替として低侵襲での組織採取とその効率的な活用法として期待できる。
|