本研究計画では前立腺がんに特異的に発現すると考えられている遺伝子PCDH11YのCD8 T細胞エピトープ、およびそのミモトープの同定を目的としている(ミモトープとはエピトープとは異なるアミノ酸配列でありながら同じCTLクローンを誘導しうるアミノ酸配列を意味する)。さらに抗原レセプターDEC-205に対する抗体との融合タンパク質を用いた樹状細胞へのミモトープの効率的な標的化システムの構築を試みる。本科学研究費の交付期間においては以下の事項の検討を行うことを計画している。1. 前立腺がんの新規がん抗原候補PCDH11YのCD8 T細胞エピトープおよびミモトープ配列の同定。2. がん抗原ミモトープを用いて誘導したCTLの抗腫瘍効果の検討。3. 抗原提示が可能な抗DEC-205融合抗体の作製。4. 抗DEC-205融合抗体による免疫反応の誘導。平成21年度の研究においては、前立腺がん特異的に発現する事を確認したPCDH11Yバリアントの詳細な検討を行い、その結果を第68回日本癌学会学術総会(演題:プロトカドヘリン11X/Y(PCDH11X/Y)バリアントのがん細胞における発現様式、発表者花房直志、小野俊朗、中山睿一)において発表した。また本年度にはバリアント特異的なアミノ酸配列をもとにエピトープ配列を推し、CTLの誘導をヒトHLAを発現するマウスモデルを用いて開始した。また実験に必要なPCDH11XとPCDH11Yの識別が可能な抗体の作成を試みている。次年度は本年度の成果をもとにさらに目的達成のため研究を進めたい。
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