研究課題
大きな間質を有する卵巣腫瘍では、顆粒膜細胞腫などのエストロゲン産生腫瘍でなくても、しばしば血中エストロゲン濃度が高いことに興味を持って研究を行っている。このような間質は、機能性間質と呼ばれてきた(Stegner HE.Pathologue 2003)が、この性ホルモンが、卵巣癌の増殖、播種・転移を促進し、また、癌幹細胞に対しても、その増殖・維持にかかわる可能性も考え得る。学内の倫理委員会の承認を得、患者に書面でインフォームドコンセントを得た上で、20例の卵巣腫瘍患者の抹消血と、腫瘍側および対側の卵巣静脈から血液を採取し、性ステロイドホルモン濃度を測定した。その結果、9例で末梢血のエストロゲン、あるいは、テストステロン濃度の上昇、腫瘍摘出後の減少を確認した。同時に、これらの症例の卵巣腫瘍側の卵巣静脈血中のホルモン濃度は、末梢静脈血濃度の10倍以上の濃度であった。腫瘍の存在しない側の卵巣静脈血中の濃度は末梢血より、低濃度であった。これらの腫瘍では、性ステロイドホルモンが産生されていると考えられるが、このうち4例はgranulosa cell tumorとtheca cell tumorであったが、残り5例は上皮性腫瘍(粘液性、漿液性、類内膜、明細胞癌)であった。さらに、術前の血中エストロゲン濃度の高い上皮性腫瘍症例の腫瘍組織を用いて、性ステロイド合成系の酵素発現を免疫組織染色で検討したところ、合成経路の律速となる酵素の発現を確認し、これらの腫瘍で性ステロイドホルモンの産生を指示する所見を得た。今後は、この所見に基づき、局所で産生される性ステロイド(アンドロゲンおよびエストロゲン)が癌の増殖、播種・転移能とどのようにかかわるのかを解析する。さらに、卵巣癌幹細胞の機能とのかかわりについても解析する。
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