研究課題
平成21年度は、研究:胎盤におけう脂質-新規のシグナル伝達系としての生理的・病理的意義-のうち、まず、正常妊娠における、妊娠中血清可溶型オートタキシン(solATX)の定量と妊娠中推移の検討として、抗ATXモノクローナル抗体を用いたEnzyme immune-sorbert assay (ELISA)により、妊娠初期、中期、後期、分娩直後の妊婦血清中solATX濃度を測定した。その結果、妊娠の推移に一致して、血清中solATX濃度が上昇し、分娩後直ちに非妊娠レベルまで低下することが確認された。この結果は、従来の妊婦血中リゾフオスフォリパーゼD(LysoPLD)活性が、妊娠中上昇し、分娩後ただちに非妊娠レベルまで低下する知見と一致した。また、正常妊娠における、胎盤のATXおよびLPA受容体LPA-2の発現と、妊娠中あるいは分娩前後の変移の検討を行った。まず、妊娠初期、中期、後期の胎盤を用いて、免疫組織化学染色、WesternblottingならびにRT-PCRを行った。ATXは、syncytiotrophoblast、villous cytotrophoblast、extravillous cytotrophoblastのすべてのtrophoblastに発現されており、このことをWestern blottingによっても確認し、確実にtrophoblastがATXを発現していることを証明した。しかし、trophoblastの分化段階による違いは認められなかった。また、RT-PCRにより、妊娠の週数に一致して胎盤組織におけるATX発現量が増加していることを確認した。これは、妊娠経過に一致して血中ATX濃度が上昇する現象と一致した。さらに、LPA受容体LPA-2の胎盤における発現を免疫組織化学染色により検討したところ、脱落膜組織において、発現が認められた。以上より、LPA系が胎盤において、妊娠の成立と維持にヒトでも関与していることが示唆された。
すべて 2009
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American Journal of Reproductive Immunology 62
ページ: 90-95